阪神高速道路5号湾岸線の六甲アイランド北から第二神明道路との名谷JCTまでを結ぶ路線です。国土交通省などの資料では「一般国道2号線大阪湾岸道路西伸部」という名称ですが、「阪神高速道路5号湾岸線」の西伸部にあたります。
2016年に自治体による再三に渡る陳情の甲斐もあってか六甲アイランド北出入口〜駒栄出入口の新規事業化が決定しました。開通予定は平成38年度です。国の直轄事業として整備される為「一般国道2号線大阪湾岸道路西伸部」となっていますが、地方で見られるような高速道路のような無料のバイパスとかではなく、有料道路として整備されるので阪神高速道路となる見通しです。直轄事業ですが、もちろん規格は妥協なき2種1級(最高速度80km/h)で片側3車線(往復6車線)で、事業期間約10年、事業費5000億円のビッグプロジェクトとなります。31号神戸山手線の湊川JCTから南の区間も同時に整備され、今回事業化が決定した湾岸線西伸部と直結しますので、一般道路を経由することなく神戸市内を通過して明石方面へ抜ける大動脈となります。(これでハーバーハイウェイや臨港道路での渋滞ともおさらば出来ます!!)この新規事業化が決定した区間には、六甲アイランド〜ポートアイランドの間に長大橋が2つ、ポートアイランドと和田岬の間にも長大橋が1つ予定されており、都市高速では異例の長大橋だらけの事業で、まるで本州四国連絡橋をもう1ルート建設するかのうような感じになっています。おかげで、開通による経済効果が高いと期待されていますが、建設費が高過ぎて費用便益比が何と「1.01」という僅差で費用より便益が上回るギリギリセーフな図ったかのような数値になっています。2016年に新規事業化された他の道路は余裕で1.00以上(次に低い北近畿豊岡自動車道の豊岡道路でも1.1あります)なので、1.01な上に5000億もかかるこの計画がよく直轄事業なんて方法で通ったなという印象です。
◆区間
六甲アイランド北IC〜南駒栄JCT〜駒栄IC(14.5km)
※駒栄IC〜湊川JCTは31号神戸山手線として同時に2026年度開通予定です。
◆今後の開通予定
六甲アイランド北IC〜南駒栄JCT〜駒栄IC:2026年度開通予定
南駒栄JCT〜名谷JCT:開通未定(都市計画は決定済み)
◆事業費
六甲アイランド北IC〜南駒栄JCT〜駒栄IC:約5000億円
南駒栄JCT〜名谷JCT:約2000億円?
(※南駒栄JCT〜名谷JCTの事業費ついては、六甲アイランド北〜名谷JCTが最大で7000億円程度と推測されていたので、そこから単純に事業化の決定した5000億円を引いただけです。もとの7000億円もかなり昔の話なので、実質不明に近いです。)
湾岸線の計画自体は40年以上前からあり、阪神間の湾岸部の埋めて計画やポートアイランドなどの人工島建設に合わせてルートが具体化したような路線です。そのため、既存の市街地に作る道路と違い、予め道路予定地が用意されていたりして、構想段階からの極端なルート変更はなく現在に至っています。
長年、3号神戸線の慢性的な渋滞や国道43号線の環境問題もあり早期全線開通が望まれていましたが、六甲アイランド北〜名谷JCTは都市計画が決定したものの、巨額の事業費が問題になり、阪神高速道路公団単独の建設は困難でした。事業費負担については国が中心となって関係機関で構成される西伸部の整備手法の意見交換会で行われましたが、平成21年には合意に至らず意見交換会そのものが中断されてしまう事態になりました。
事態が好転しだしたのではここ数年で、建設が凍結された新名神高速道路などが事業着手されるなど、凍結されていた道路計画の復活や、全国の高速道路のミッシングリング解消に向けた動きが強まるなか、国直轄事業として2016年度に六甲アイランド北IC〜駒栄JCT〜駒栄ICの新規事業着手が決定しました。
ですが、南駒栄JCT〜名谷JCTについては依然として進捗はなく、当面は建設される事はなさそうな状況です。
途中の六甲アイランド〜ポートアイランド、ポートアイランド〜和田岬の2か所で神戸港を行き交う船舶の航路を跨ぐため、長大橋が建設されます。西伸部の事業化時点では斜張橋になるような雰囲気ではありましたが、詳細は検討中で最大支間長なども未定でした。それが、2019年12月10日に長大橋の検討を行っていた大阪湾岸道路西伸部技術検討委員会より"中間とりまとめ"という形ですが、橋梁形式等の詳細が公表されました。
◆六甲アイランド〜ポートアイランド(灘浜航路、新港航路)
橋梁:5径間連続斜張橋
長さ:2,730m
最大支間長:650m
主塔の高さ:201m(海水面からの高さ)
※主塔の高さについては資料により数値が異なる為、参考値程度でお考え下さい。
★上記画像は「国土交通省近畿地方整備局難波国道工事事務所 大阪湾岸道路西伸部 資料 大阪湾岸道路西伸部(六甲アイランド北〜駒栄)事業概要」より抜粋
六甲アイランド〜ポートアイランド間には4本の主塔で構成される『5径間連続斜張橋』が建設されます。しかも最大支間長約650mとなり、なんと! 連続斜張橋では世界最大規模になります。ちなみに、5号湾岸線の東神戸大橋も3径間連続斜張橋でかなり大きな橋ですが、最大径間長485mですので、六甲アイランド〜ポートアイランド間の斜張橋は、これよりも165mも最大支間長が長く、さらに5径間連続となりますので、かなりの巨大橋になるのが分かります。
◆ポートアイランド〜和田岬(神戸西航路)
橋梁:1主塔斜張橋
長さ:1,180m
最大支間長:480m
主塔の高さ:230m(海水面からの高さ)
※主塔の高さについては資料により数値が異なる為、参考値程度でお考え下さい
★上記画像は「国土交通省近畿地方整備局難波国道工事事務所 大阪湾岸道路西伸部 資料 大阪湾岸道路西伸部(六甲アイランド北〜駒栄)事業概要」より抜粋
ポートアイランド〜和田岬間には、主塔1本で構成される斜張橋が建設されます。主塔1本ですが、横から見るとポートアイランド側の路面がやや低く、主塔の和田岬側で路面高さが最大になるような、一方向に向けた坂のような斜張橋となり、少しアンバランスなデザインをしております。こちらも最大支間長480mとかなり大きな斜張橋で1本主塔の斜張橋としては世界最大規模となります。長さや最大支間長こそ六甲アイランド〜ポートアイランド間の斜張橋より小さいのですが、主塔はこちらの方が高くなります。
《他の長大橋との比較》
◆他の都市高速道路の長大橋との比較
◆瀬戸大橋や明石海峡大橋との比較
湾岸線8期区間の駒栄JCT〜駒ヶ林南は前の区間から続く高架道路となりますが、駒ヶ林南〜名谷JCTはほとんどがトンネル構造です。駒ヶ林南〜名谷JCTについては湾岸線「8期区間」として、今回2016年事業化が決定した区間よりも早く既に平成6年9月に都市計画が決定していますが、現在は計画の進捗がみられていない状況で、事業化の見通しは未定状態です。この区間のさらに向こうというか延長上にある第二神明道路北線(神戸西バイパス)のさらに西で、「播磨臨海地域道路」という道路が構想中です。
この「播磨臨海地域道路」は名前の通り明石市、加古川市、姫路市の播磨の臨海地域を通る道路で、道路の性格でいうと臨海工業地帯を結ぶ為、阪神高速道路湾岸線に近いものです。エリアに絞るとこの道路は文字通り播磨地域の道路でしかないですが、大阪府〜兵庫県という単位で見ると、泉州〜大阪〜神戸〜播磨という大阪湾の南から播磨灘を結ぶ一直線の巨大ネットワークを形成できるため、かなりの将来性を有していると言えます。また並行する第二神明道路や加古川バイパス、姫路バイパスでは渋滞が頻発して飽和状態なうえに、すでに建設から40年以上経っており、改修工事等を考えると近い将来それらを代替するルートの候補として挙がる可能性があります。
2016年の3月にやっと新規事業化が決定した阪神高速道路湾岸線西伸部(六甲アイランド北〜南駒栄JCT〜駒栄)ですが、この計画は決してここ10年程度の間に構想されたものではありません。今から40年以上前に既に構想があり、昭和47年にはその原形とも呼べるルートが導き出されていました。その昭和47年当時は、現在の31号神戸山手線の原形である「山手線(資料によっては阪神山手線)」という路線が阪神間の山手沿いに東西に通り、さらにその南に現在の3号神戸線(正確にはその原形となる路線)、そして海側には計画されていた埋立地を結ぶ現在の湾岸線が計画され、この3本の路線で阪神間を結ぶ予定でした。
無論、この計画は予定通りには行かず、まともに開通できたのは現在の3号神戸線のみで、湾岸線は開通出来たものの神戸市内の入口付近で途切れた状態のままで現在に至り、阪神間の自動車交通の大きな問題となっています。
湾岸線の初期構想で近畿地区幹線道路協議会で行われていた検討は下記の通りです。
(「幹線協の二十年」より概ね抜粋して記載しています)
・昭和44年9月 近畿地区幹線道路協議会計画調整部会
湾岸道路の性格と交通需要、幅員、構造、ルート、さらに第二湾岸道路(恐らく後の第二湾岸線と推測されます)を前提に考えるから1本で考えるか問題点が提起されました。
結果、当面は湾岸道路は第1線(現在の湾岸線)を対象に検討、神戸西部は須磨付近で国道2号線へ暫定的に取り付け、延伸部は次期構想として検討する事が決まりました。
・昭和47年10月 近畿地区幹線道路協議会計画調整部会
これまでに、現在の阪神高速道路7号北神戸線の原形である背山道路や山陽自動車道についてもルート等が検討され、阪神山手線(現在の31号神戸山手線の元の計画)に係わる調整で、神戸市付近の道路パターン図が示されています。そしてこのパターン図が現在の神戸市近郊の道路計画の原形となっています。
下記は昭和47年10月の近畿地区幹線道路協議会計画調整部会で示されたパターン図を元に現在の整備状況を加えて図にしました。