淀川左岸線2期区間の豊崎出入口からさらに西へ延伸させて、近畿自動車道と第二京阪道路の門真JCTに接続する高速道路計画で、門真JCT付近以外は全線が地下に建設されます。特に途中の豊崎IC〜内環ICは大部分が「大深度地下」と呼ばれる地下50m以上のかなり深い位置に作られるトンネルになります。
この淀川左岸線延伸部が開通することで、沿岸部を通る5号湾岸線から淀川左岸線を通して第二京阪道路が繋がり、京阪間の大動脈が誕生します。また、大阪都市再生環状道路の一部でもあり、この環状道路が全線開通することにより、2号淀川左岸線、近畿自動車道、6号大和川線、4・5号湾岸線で一つの環状高速道路が形成されます。近畿自動車道はネクスコ西日本の高速道路ですが、阪神圏の料金統一化により道路会社の違いは管理区分でしかないため、1号環状線の外側を通る「第2環状線」としての機能が発揮されます。ついに昭和45年に構想された『阪神高速第2環状線』が形を変えながらも完成することになります。
◆区間
豊崎IC〜門真JCT(8.7km)
◆今後の開通予定
豊崎IC〜門真JCT:2032年度開通予定
◆事業費
豊崎IC〜門真JCT:約4000億円
この区間には阪神高速道路公団時代から高速道路計画があり、昭和45年には今の3号神戸線の海老江JCTから豊崎を通り平野川方面へ抜ける「阪神高速道路 第2環状線」と、その途中の都島中通で分岐して門真JCTを抜けて京都方面へ向かう「阪神高速道路 第2京阪線」が計画されていました。ちょうど今の2号淀川左岸線2期区間と今回の延伸部にほぼ近いルートで、この昭和45年の計画が淀川左岸線2期と延伸部計画の原典にあたるものになります。
高速道路計画としては昭和45年以前にもあり、阪神高速道路公団発足前のどこにどの路線を建設すべきかの調査段階では、既に国道43号線の伝法大橋の南付近から淀川左岸沿いに通り今の12号守口線の長柄付近(大川を渡る付近)に至る路線が構想されていました。
もっと以前には、名神高速道路の建設前のルート検討の段階ではありますが、京都方面から枚方を抜けて大阪市内では淀川左岸沿いを通り、国道43号線「第二阪神国道」の伝法大橋付近でこの国道沿いに神戸方面へと向かうルートが検討対象になっていました。
◆名神高速道路建設前のルート案(1951〜1957年頃と推測されます)
↑名神高速道路建設前の大阪・神戸付近の検討されたルート図(名神高速道路建設誌より抜粋)
点線のルートが淀川左岸沿いと国道43号線を通って神戸向かうルートです。
伝法大橋〜都島区の付近までは現在の淀川左岸線とルートが似ています。
◆阪神高速道路公団発足前の路線案(1961年頃)
↑阪神高速道路公団発足に向けて調査検討がされていた頃の路線案です(阪神高速道路網計画案より抜粋)
「千里山線」と記載されていますが、こちらも伝法大橋〜都島区の付近までは現在の淀川左岸線に近いルートを通っています。
◆昭和45年〜昭和57年の阪神高速道路の構想計画
↑阪神高速道路道路整備第7次5ヵ年計画図(阪神高速道路公団S48年度年報より抜粋)
「大阪高槻線」と「第2京阪線」がルートと道路構造を変えたのが現在の淀川左岸線延伸部にあたります。
この計画図と「第2京阪線」という名称が示すように、現在に第二京阪道路は阪神高速道路の路線として構想されていました。
これまでの都市高速道路と違い、幹線道路や河川に沿うようなな民有地を避けるルートではなく、「大深度地下」を利用することで、これまではほぼ不可能に近かった住宅地などの人口密集地を貫く最短距離に近いルートになっているのが特徴です。
しかし、この大深度というのはある意味「地下方向への"山登り"」のようなもので、平成28年12月15日に行われた「社会資本整備審議会道路分科会 近畿地方小委員会(第16回)」での平成29年度新規事業候補箇所の配付資料によると大深度地下区間の前後には4%の勾配が出来てしまう事が正式に分かりました。実はこの4%の勾配とは本線では少しきつめの勾配で、31号神戸山手線の神戸長田IC→妙法寺ICまでの上りトンネルも本線にしてはきつめの勾配ですが、あれで3%勾配です。阪神高速の4%勾配は私が知る限りでは5号湾岸線の東神戸大橋の深江浜IC付近と、港大橋ぐらいです。この橋については長くても数百m程度が4%勾配になっているわけですが、淀川左岸線では数kmにも及ぶ長さで4%勾配が続きますので、渋滞や事故ポイントにならないように工夫が必要だと思います。特にトンネルでは運転していても勾配という感覚が無くなりやすく、下り4%勾配はスピードがかなり乗ってしまう危険性があるので、オービスを複数台付けて速度超過を要注意させるのも有効かと思います。
◆(仮)豊崎IC〜大川付近
(仮)豊崎ICが淀川左岸線延伸部の起点となります。淀川左岸線2期区間の一般道路の「都市計画道路淀川南岸線」への出入口として計画されていた部分が延伸部の本線となります。その為、2期区間から淀川南岸線への出入口については廃止されることになりました。さらに、このICの付近は2期区間の都市計画決定時は掘割になる予定でしたが、蓋をされて完全にトンネル化されます。
また、2期区間と同様に、淀川と並行する区間には一般道路の淀川南岸線が建設されます。
(仮)豊崎ICより東では淀川南岸線の地下を進みますが、この淀川南岸線が2車線で建設される事になり(現状の計画では4車線でしたが、淀川左岸線延伸部で交通需要をまかなえるという事で、豊崎より東の一般道路淀川南岸線は2車線に変更になるそうです)、淀川左岸線延伸部の本線もこの道路用地の幅に合わせる為に、トンネルを上下線で並行させず、東行きが上、西行きが下の上下2階建て構造にして、占有幅を狭くしたトンネルになります。(2階建て構造と記載していますが、開削トンネル区間では「上段:東行きトンネル、中段:避難路、下段西行きトンネル」となるようです) (仮)豊崎ICから天神橋付近までは開削トンネルで建設し、それより東はシールドトンネルとなります。
ちょうど12号守口線と交差する付近で大川を越えると、友淵小学校の地下にあたりますが、ここから大深度地下を利用した区間になります。最大深度は70mにもなります。
(仮)豊崎IC〜大川付近は一般道路の直下⇔大深度地下を結ぶ坂道になり、最大深度70mまで潜る為か阪神高速道路の本線勾配としてはきつめの4%勾配になっています。
◆大川付近〜関目1丁目付近
大川を越えた付近で東行きと西行きを上下2階建てのトンネルから、それぞれ並行に配置されるトンネルになります。「友淵小学校」の地下からは南東向きに進み、「地下鉄谷町線野江内代駅」の北側付近に向けてほぼ一直線に進み、駅の近くにある榎並小学校の北側の地下をかすめて、「大阪市城東区成育3丁目12番地付近」の地下でゆるやかなカーブで東へ向きを変え、「関目1丁目交差点」の北側に至ります。「城東区成育3丁目12番地付近」から東の区間は計画中の一般道路「都市計画道路 都島茨田線」の地下を通る事にはなっていますが、この道路の完成予定は全くの未定で、現在は民家をはじめ「ホームセンター コーナン関目店」のような大きめの商店もあり、特に着工を目指して用地買収を進めているような印象は受けません。尚、「都市計画道路 都島茨田線」は幅員がかなり広い道路で、この予定幅員の南端には、並行するように対面通行や一方通行の細い道が通っていますが、淀川左岸線延伸部の予定線はこれらの道路の地下ではなく、少し北側の道路では無い部分を突き抜けています。
◆関目1丁目付近〜花博記念公園西口交差点〜(仮)内環IC付近
「関目1丁目交差点」の北側からもそのまま一直線に東へ進み国道479号線(大阪内環状線)と花博通の「花博記念公園西口交差点」に至ります。大川を越えた付近からこの花博記念公園西口交差点までが「大深度地下」を利用する区間になり、住宅地や商店等の地下を貫きますが、用地買収が発生しません。
国道479号線(大阪内環状線)「花博記念公園西口交差点」から東は花博通の道路用地の下にトンネルが建設されます。「花博記念公園西口交差点」〜「横堤4丁目交差点」付近まではシールドトンネルとなり、この交差点より東は開削トンネルとなります。ここには(仮)内環ICが設けられ、東行きの入口と西行きの出口が建設されます。出入口は花博通の中央に作られ、地下に潜って本線と接続しています。入口の料金所は計画図を見る限りでは花博通から入って直ぐの部分に少し幅を広げた部分があるので、地上もしくは半地下に作られるようです。
◆(仮)内環IC付近〜(仮)門真西IC〜門真JCT
「関目1丁目交差点」の北側からもそのまま一直線に東へ進み国道479号線(大阪内環状線)と花博通の「花博記念公園西口交差点」に至 (仮)内環IC付近から東に進み「花博記念公園前交差点」のすぐ東から掘割区間となりトンネルから出ます。掘割区間は花博通りの中央に作られ、既に空けられている中央の空間に収まるようです。トンネル出口から約250mほど掘割区間を東へ進んだ地点で今度は高架道路になります。この高架になったすぐ東で(仮)門真西ICの出入口の合流分岐車線が本線両端に作られます。出入口は阪神高速道路の一般的な形ではありますが、ストレートに一般道路と接続せず、本線高架の下へ潜り込む形になり花博通の中央に出入口が設けられるようです。
(仮)門真西ICの東で門真JCTに至ります。本線が第二京阪道路に直結し、近畿自動車道とも吹田方面、和歌山方面に接続します。
淀川左岸線延伸部の特徴でもある「大深度地下」の利用については前例が少なく、高速道路ではまだ大深度地下の開通区間はありません。この大深度地下は誰でも何処でも利用出来るものではなく、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」にて道路、鉄道、河川等の公共の利益となる事業にのみ利用が限られ、大深度地下が利用出来る地域も首都圏・中京圏・関西圏とかなり限定的な地域に限られており、利用するには認可が必要です。
関西では、神戸市の送水管の整備事業で短い区間ですが大深度地下で建設している例があります。道路では首都圏で世田谷区や練馬区の住宅地の地下を貫く東京外かく環状道路(大泉JCT〜東名JCT)がこの大深度地下を利用する予定で着工しております。
淀川左岸線延伸部は2017年度には事業に着手する見込みですが、開通予定が2032年度の予定ですので開通まで15年をかけることになります。恐らくはこの大深度地下のトンネルが大きな原因と推測されますが、トンネル技術も進歩しており阪神高速も既存の2号淀川左岸線、建設中の6号大和川線など着実に都市部のトンネル技術を磨いてきていますので、安全第一を厳守しながら工期の短縮が図られるのではないかと思います。